シン・大腸がん予防論

大腸がん予防・早期発見に何が重要なのか?

以下は検索で出てくる一般的な大腸がん予防ガイドラインです。

  • 食物繊維を多く摂る
  • 適度な運動
  • 禁煙
  • 定期的な便潜血検査(40歳以上は特に重要)

食物繊維を多く摂る、適度な運動、禁煙。もちろん大事です。大腸がん予防の観点からだけではなくこれらは大変重要です。しかし “言うは易く行うは難し” なかなかすべてを実践できるものではありません。その証拠に現在の日本の大腸がんは増え続けている・・。大腸がん予防・早期発見・治療はどうすればよいのでしょうか?

大腸がんは最も多く診断されるがんの一つ。特に女性では死亡原因のトップ。

内視鏡診療をしていて進行大腸がんを発見すると、もっと早く検査を受けられていたら・・と残念に思うことが多々あります。どうしたら大腸がんを早期発見し治療できるのか私の臨床経験を踏まえてお話したいと思います。

早期でなく進行大腸がんで見つかる患者には共通点がある

進行大腸がんでみつかる患者はほぼ決まって“していないこと”があります。何でしょうか。

便潜血検査を受けていない」

大腸がん検診で最も簡便かつポピュラーな“便潜血検査”。進行した大腸がんでようやく見つかる患者さんは大抵この検査を今まで受けたことがない、もしくは受けていても10年以上前だった、とおっしゃいます。

なぜ便潜血検査が大事なのか?それを述べる前に大腸がんの成り立ちから説明します。

大腸ポリープは成長してやがて“がん”になる。大腸ポリープたちは成熟した“大腸がん”を目指して成長を続ける

殆どの大腸がんはいきなり“がん”として発生するのではなく良性(殆どは腺腫)のポリープから発生します。長い年月をかけて成長を続けポリープの中でもエリートたちが“がん”に成長できるのです。なぜ大腸ポリープを切除するのか、それは“将来がんになる芽を摘む”ためです。すべてのポリープが“がん”に成長できるわけではありません。がんに成長できるのはポリープ界のエリートだけ。これらポリープ界のエリート達は出世が早いためすくすく成長します。成長するためにたくさんの血液を宿主から自分に引き込んでは大きくなる。引き込んだ多量の血液が表面から漏れ出して出血する、もしくは自分の成長に見合うだけの血液が足りなくて栄養不足になり表面が崩壊して出血するのです。

この特性を利用したものが便潜血検査です。便潜血検査は昔からある簡便で負担のない検査ですがこのハイテク全盛の時代になってもその有効性は全く色褪せません。

なぜ便潜血検査が大事なのか?

簡単に言うと、がんになるポテンシャルのあるポリープ、もしくは既にがん化しているポリープは出血します。先程述べた“大腸がんに成長することができるポリープ界のエリート達”です。便潜血検査はこれら「治療の必要性が高まっているポリープの存在を知らせるのに最も適した検査」のため重要なのです。つまり便潜血陽性になったとき大腸内視鏡を行い、これらポリープを根こそぎ切除してしまえば進行した大腸がんになりようがないのです。

治療の必要性が高まっているポリープは“血”を出す。便潜血検査はそれを検出する

便潜血検査は毎年することに意義がある

便潜血検査は出血していないポリープ(つまり治療の必要性が高まっていないポリープ)しか存在しない場合には陰性になる可能性が高いです。言い換えると“便潜血陰性なら慌てて切除する必要のないポリープしか存在しない”ということができます。毎年便潜血検査をしていればこれら治療の必要性が高まっていないポリープが成長して出血したときには陽性になるので、そのタイミングで大腸内視鏡を行うことで手遅れになることを防げます。つまり毎年することで今後悪性に成長するであろう“がんの芽ポリープ”を“芽”のうちに刈り取ってしまうことが可能となるのです。毎年実施せず間隔が空いてしまうと“がんの芽”が成長して“進行がん“になってしまうのです。

便潜血陽性になれば大腸内視鏡を受けるだけ!あとは腕のいい内視鏡医にまかせておけば眠っている間にすべての治療必要ポリープは切除されます!

便潜血が陽性になれば大腸内視鏡検査を受けます。陽性になっても恐れずに、むしろ治療が必要なポリープや早期大腸がんをみつけて切除できるチャンスと捉えて積極的に大腸内視鏡を受けましょう。大腸内視鏡はポリープ発見から治療まで同時にできるので非常に大事な検査です。ただ大腸内視鏡は施行医の技術の差が如術に出ますのでどこで受けるかは事前にしっかり調べて受けてもらいたいです。できれば麻酔体制がしっかりしていてどこまでのポリープを切除できる技術もっているのか、などしっかり発信している施設で受けていただくことをお勧めします。あとは内視鏡医にすべてをゆだねてください。軽い麻酔で眠っている間に治療必要なポリープはすべて切除されていることでしょう。

大腸ポリープ切除の実際などは以下の河内総合病院内視鏡センターホームページや関連動画でもご視聴いただけます。

河内総合病院内視鏡センターホームページ https://kawati-endoscope.com/

結論

こんなに大事な便潜血検査ですが、日本国内における受検率は2022年時点で45.9%と依然として低い水準にとどまっています。なんと勿体ない! 受検率がもっと上がれば大腸がんで苦しむ患者は確実に減ります。“大腸がん死撲滅”を目指して・・

「毎年便潜血検査受検⇒陽性になれば大腸内視鏡」

を是非実践してみてください。

筆者:徳原満雄

(筆者資格)

  • 河内総合病院 消化器内科部長/内視鏡センター長
  • 医学博士
  • 日本内科学会認定内科医/総合内科専門医/指導医
  • 日本消化器内視鏡学会認定専門医・指導医・近畿支部評議員・学術評議員
  • 日本消化器病学会認定消化器病専門医・指導医・近畿支部評議員
  • 日本肝臓学会認定肝臓専門医・指導医
  • 日本胆道学会認定指導医
  • 日本膵臓学会認定指導医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 日本腹部救急医学会認定腹部救急認定医
  • 難病指定医

(筆者学歴)

  • 2003年関西医科大学卒業

(筆者論文)

  • Non-injection resection using bipolar soft coagulation mode for large colorectal polyps including incidental cancer. Endoscopy. 2025 Dec;57(S 01):E991-E992.
  • Depth of noninjecting resection using bipolar soft coagulation mode for 6 to 9 mm colorectal polyps: a retrospective study in Japan. Clin Endosc. 2025 Aug.
  • A method of “Noninjecting Resection using Bipolar Soft coagulation mode; NIRBS” for superficial non-ampullary duodenal epithelial tumor: a pilot study. BMC Gastroenterol. 2024 Oct 1;24(1):343.
  • Evaluation of a new method, “non-injection resection using bipolar soft coagulation mode (NIRBS)”, for colonic adenomatous lesions. Clin Endosc. 2023 Sep;56(5):623-632.
  • Evaluation of complications after endoscopic retrograde cholangiopancreatography using a short type double balloon endoscope in patients with altered gastrointestinal anatomy: a single-center retrospective study of 1,576 procedures. J Gastroenterol Hepatol. 2020 Aug;35(8):1387-1396.
  • 胆管内金属ステント(self-expandable metallic stent:SEMS)留置後の胆嚢炎に対してPTGBD後に超音波内視鏡下胆嚢ドレナージ(EUS-guided gallbladder drainage:EUS-GBD)による内瘻化を施行した1例. 胆道(0914-0077)31巻2号 Page246-251(2017.05)

(筆者海外学会発表)

  • 2015.12 APDW 2015 TAIPEI (In Taipei, Taiwan). Evaluation of complications after ERCP using a short double balloon enteroscope (DB-ERCP)
  • 2016 APDW(in Kobe). Evaluation of complications after ERCP using a short double balloon enteroscope (DB-ERCP) in patients with altered gastrointestinal anatomy

(筆者近年の国内学会発表)

  • 2025年10月 第33回JDDWパネルディスカッション9 大腸鋸歯状病変の取り扱いの現状-病理医とのクロストーク- 大腸10mm以上鋸歯状病変に対するNoninjecting resection using the bipolar soft coagulation mode(NIRBS)の有効性・安全性・簡便性の検討
  • 2022年5月 第103回日本消化器内視鏡学会総会ワークショップ 大腸腫瘍に対する内視鏡診断・治療の将来展望 バイポーラスネアを用いた局注しないEMR (Non Injection EMR using Bipolar Snare; NIEBS) の有効性・安全性の検討

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